バッカーズ・ファンデーションとAITは、2007年からアーティスト・イン・レジデンスプログラムを通して協働を続けています。
これまで10回を数えた本プログラムは、毎年2名のアーティストと1名のキュレーターを日本に招聘して、リサーチと制作に続く展示の機会を設けることで、国際的な芸術文化の交流の場として役割を担いました。プログラム終了後、これらのアーティストとキュレーターは、国内外で展覧会や芸術祭に招かれたり、関心領域や創作に対する思考、方法論が多方向に伸びるなど、普段の生活環境から離れて養われた視点はそれぞれの活動において今も欠かせないものとなっています。また、その後も日本を訪れ、当時の記憶を振り返りながら、アップデートされたレンズで日本を見つめ直しています。
「ホームアゲイン −Japanを体験した10人のアーティスト」展(原美術館、2012年)
のために再来日したアーティスト 撮影:木奥恵三
本プログラムは、今後もアーティストの表現活動を促進させ、また国内外で新しい経験と研鑽を積む機会を継続的に支援することを主眼に、2019年より、日本を活動拠点とする2名のアーティストを選出して、海外のレジデンス機関、またはアーティスト自身が選択する訪問先に派遣します。
The BAR Vol.11として推薦により選ばれたアーティストは、2週間から1ヶ月間をかけて、フランスやイタリアなどヨーロッパ各国を中心に、西洋絵画の歴史を再訪してこれまでの思考をさらに深めたり、各地で活動するアーティストやアートスペースの訪問にあわせて議論の場を設けるなど、海外における創作活動の鼓動とアートシーンを体感する機会を得ています。
引き続き、アーティストやキュレーターによるリサーチや滞在制作の様子、その後の活躍など、国内外のあらゆる場所に派遣する本プログラムの今後をお伝えしていきます。
左:オルセー美術館(パリ)展示風景/右:ヴェッキオ宮殿(フィレンツェ)の一室。メディチ家の宮廷画家であるブロンツィーノが手がけた壁画と絵画 撮影:横山奈美
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企業家やビジネスの専門家が支援するアーティスト・イン・レジデンスプログラム 10年の集大成!
「東京 アラカルト -The Backers Foundation and AIT Residence Programme (The BAR) 10年の記憶」展
会期:2018年8月24日(金)- 9月1日(土)*8月26日(日)、27日(月)を除く
会場:小山登美夫ギャラリー / シュウゴアーツ / タカ・イシイギャラリー(六本木)
<展覧会イメージビジュアル>
撮影:ミティ・ルアンクリタヤー(2017年タイより招聘)
デザイン:福岡泰隆
プレスリリースはこちら 日本語:Download(PDF / 3.6MB)/英語:Download(PDF / 3.2MB)
− 20名のアーティストが映し出す、これまで10年間の東京
バッカーズ・ファンデーションとNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]は、8月24日(金)から9月1日(土)まで「東京 アラカルト -The Backers Foundation and AIT Residence Programme (The BAR) 10年の記憶」展を六本木complex665にある小山登美夫ギャラリー / シュウゴアーツ / タカ・イシイギャラリーにて開催します。本展は、2007年より2017年まで海外のアーティストを東京に招聘したアーティスト・イン・レジデンスプログラムの集大成です。
バッカーズ・ファンデーションとAITは、10年に渡る協働的なアーティスト・イン・レジデンスプログラムを通して、これまで欧米はもとより中南米やアフリカ、東南アジアの国々から毎年2名、全15カ国から20名におよぶ気鋭のアーティストを招聘し、日本でのリサーチと作品制作の支援を行いました。2012年には、原美術館(品川)にて「ホームアゲイン −Japanを体験した10人のアーティスト」展を開催し、美術館内の伸びやかな空間にプログラムの開始から5年間で招聘したアーティストらによる作品を展示しました。
社会貢献活動を軸にプロジェクトを「バックアップする」ことを目的とする企業家やビジネスの専門家によるバッカーズ・ファンデーションと、現代アートのさまざまなプログラムを手がけるNPOとの連携が特徴である本プログラムは、これまで都内のギャラリーより協力を得て、アーティストが滞在中に制作した新作を広く紹介する機会を創出してまいりました。その一部はバッカーズ・ファンデーションが所蔵しています。
12年目を迎える2018年、本プログラムを振り返る「東京 アラカルト -The Backers Foundation and AIT Residence Programme (The BAR) 10年の記憶」展では、小山登美夫ギャラリー、シュウゴアーツ、タカ・イシイギャラリーより協力を得て、日本に滞在した20名のアーティストによる作品を一挙に展示します。
これまで本プログラムは、アーティストの視点と作品を通じて、彼らの国や地域が辿った複雑な歴史と今の姿を見つめてきました。2007年の第一回目に招聘したカディム・アリ(アフガニスタン)が生まれ育った中央アジアのハザラ族は、紛争により治安と生活状況の悪化を経験し、その最中に起きたバーミヤン渓谷の大仏破壊は今もアリの思考と創作に大きな影響を与えています。デュート・ハルドーノ(インドネシア)とシャギニ・ラトナウラン(インドネシア)は、2011年、東日本大震災後の余震が続く中、インドネシアでも経験した「揺れ」への記憶と共感から、特別な思いを抱えて本プログラムに参加しました。ゴル・スーダン(ケニア)とアルベルト・ロドリゲス・コジア(グアテマラ)は、自国で表現活動の抑制を経験しながら来日し、帰国後もたゆまずアーティスト活動を続けています。2016年に来日したクリシュナプリヤ・ターマクリシュナ(スリランカ)は、同国で2009年まで続いた民族間の争いにより不在となった家族との記憶から作品を制作しています。本プログラムで初めて国外に出る機会を得て、高層ビルが立ち並ぶ東京を目にしながら、失った家族や毀損されたスリランカの伝統的調度品にまつわる公私の記憶と現代社会を繋ぎました。
自国と日本において、さまざまな歴史の通過点を経験したアーティストらは、その背景をもとに、日本で社会や人々との関係性を体感しながら創作活動を行い、作品に昇華させました。それらをこの機会に再び展示することは、改めて彼らの国と地域の歴史文化を知る機会になると同時に、ひいては私たちが住む日本、または東京のこれまで10年を振り返り、その歴史化を試みるささやかな行為ともいえるでしょう。
本展では、3つのギャラリー空間を、東京のこれまでと今を見つめる「Urban Space −都市空間」(小山登美夫ギャラリー)、「Inhabitants −住まう人びと」(シュウゴアーツ)、「Imaginative Memory −空想」(タカ・イシイギャラリー)とゆるやかにテーマを掲げて構成します。10年間の異なる時期に制作されたこの作品群は、時に共鳴して語り合い、私たちが暮らす東京の姿を考察する視点に繋がっていきます。個々のアーティストが映し出す東京のアラカルト、そしてその集合体となる本展をじっくり味わって頂ければ幸いです。
開催にあわせて、展覧会を巡るガイドツアーを開催するほか、当時の展示風景や関係者から寄せられたコメントなどを収録した本プログラムの記録冊子「東京 アラカルト」を制作しました。展示と合わせて是非ご高覧ください。
皆さんのお越しをお待ちしています。
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ヴェロニカ・ウォン / Veronica Wong
(1981年中国広州生まれ、広州在住)
広東省広州市にある時代美術館 (TIMES MUSEUM) アソシエイト・ディレクター兼パブリックプログラム部門キュレーター。
ロンドンのウェストミンスター大学において視覚文化を学んだウォンは、2012年にIndependent Curators Internationalに参加。広州市の時代美術館を中心に、国内でも多くのプロジェクトや展覧会の企画に関わる。主に、「Plug in! - Times Museum Community Art Festival」(2012年)、「Times Museum Screening Season 2013」(2013年-2014年)、「Wrong Place, Right Time - Times Museum Community Art Festival 2014」(2014年-2015年)、「Art Neighbourhoods - Times Museum Community Art Festival 2016」(2016年-2017年)、「Sitting-Still-Moving - Times Museum Art on Track」(2015年)、「Sissel Tolaas: Chain of Smell Molecules - Times Museum Art on Track」(2015年-2016年)、「Gunilla Klingberg: Brand New View - Times Museum Art on Track」(2016年)などがある。
滞在期間:2017年6月28日-7月26日
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
ヴェロニカ・ウォンによるMADレクチャー:Contemporary Art in China
日時:7月6日(木)/ 19:00 - 21:00
場所:代官山AITルーム / 定員:30名 *英語でのレクチャーとなります。
受講お申し込みはこちら
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サラ・アブ アブダラ /Sarah Abu Abdallah
(1990年生まれ、サウジアラビア・カティーフ在住)
サウジアラビアの東部にある都市、カティーフを中心に国内外でアーティスト活動を行う。ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(アメリカ・ロードアイランド州)にてデジタル・メディアを学び、シャルジャ大学(アラブ首長国連邦)でアート・デザインを学んだ。現在は、映像やインスタレーション、詩、イメージなどのあらゆるメディアを扱いながら、サウジアラビアの社会に内在する問題を浮き上がらせるような作品を制作している。
過去の展覧会に、「Fluidity」(Kunstverein、ハンブルグ、2016)、「Co-Workers」(パリ市立近代美術館、フランス、2015-16)、「To Gaze at Ten Suns Shining - project with Josh Bitelli」(POOL、ハンブルグ、2015)、「Prospectif Cinéma / Filter Bubble」(ポンピドゥー・センター/ルマ財団、 フランス、2015)、「Private Settings」(ワルシャワ近代美術館、ポーランド、2014-15)、「Arab Contemporary」(ルイジアナ近代美術館、コペンハーゲン、2014)、89plus Marathon(ロンドン、2013)、シャルジャ・ビエンナーレ11(アラブ首長国連邦、2013)、ベネチア・ビエンナーレ(イタリア、2013)がある。
滞在期間:2017年5月14日-8月6日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:The BAR Vol.10 「Shaping Voices, Silent Skies」
ミティ・ルアンクリタヤー(タイ)とサラ・アブ アブダラ(サウジアラビア)による新作展
2017年7月1日(土) - 2017年7月17日(月・祝)
会場:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery
オープニング・レセプション:6月30日(金) 18:00 - 20:00
アーティスト・トーク:7月8日(土)14:00-16:00
会場:8/ COURT(渋谷ヒカリエ8F)
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ミティ・ルアンクリタヤー /Miti Ruangkritya
(1981年バンコク生まれ、バンコク在住)
Photo: Andras Bartok
ルアンクリタヤーは、タイのバンコクを拠点に写真やテキストなどを用いて創作活動を行っている。その作品は、ルアンクリタヤー自身の周辺にみられる問題を軸にしながら、特に都市におけるさまざまな環境や人びとと、その変化や進歩などを扱っている。
代表作のひとつであるImagining Flood (2011) は、バンコクが洪水による被害を受けた際、都市に住む者を襲った恐怖や空想と期待を、不気味なほどの夜の都会を背景にあぶり出すことを試みている。またThai Politics (2006ー) は、視覚イメージとしての写真を用いて、不安定な状況が続くタイの政治に対するさまざまな人の異なった態度を表現している。それに続くシリーズは、態度のみならず、そこにどのようなアプローチが見られるのかを、SNSに見られる写真や、より伝統的なフィルムとデジタル写真における切り取られ方や提示の仕方をもとに制作されている。近年のDream property (2014ー) は、今も増え続ける住宅の開発と、人間の理想や願望との関係をテーマとした作品である。そこには、まさにバンコクの住宅市場に飲み込まれようとしている売却地や新たに建設中の高層住宅ビルの写真が含まれている。これらの作品とともに、不動産広告を飾るキャッチコピーが虚しさを漂わせながら提示されている。
過去の展覧会に、「LANDSCAPE: Hotel Asia Project」(GALLERY SOAP、福岡から中国、タイを経て、東京藝術大学に巡回、2016-2017)、「Omnivoyeur」(クリスティーナ・クービッシュ氏との共同プロジェクト、バンコク・アート・アンド・カルチャー・センター、タイ、2016)、「Dream Property」(バンコク・シティシティ・ギャラリー、タイ、2016)、「The Archive as Conversation」(シンガポール・フォトグラフィー・フェスティバル、シンガポール、2016)、「Urban and Reflections: Contemporary Thai Photography」(オターバイン大学、オハイオ州、2016)などがある。
2011年、マゼンタ・ファンデーションより次世代の写真家に送られる国際賞にノミネートされたほか、2015年に国際写真賞のPrix Pictetにも選出されている。2016年には、ソヴリン・アジア美術賞のファイナリストに選出されるなど、国内外を問わず活躍している。
ウェブサイト
滞在期間:2017年5月10日-8月6日
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:The BAR Vol.10 「Shaping Voices, Silent Skies」
ミティ・ルアンクリタヤー(タイ)とサラ・アブ アブダラ(サウジアラビア)による新作展
2017年7月1日(土) - 2017年7月17日(月・祝)
会場:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery
オープニング・レセプション:6月30日(金) 18:00 - 20:00
アーティスト・トーク:7月8日(土)14:00-16:00
会場:8/ COURT(渋谷ヒカリエ8F)
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アグネシュカ・グラツァ / Agnieszka Gratza
(1974年ポーランド生まれ。ロンドン在住)
グラツァは、ロンドンを中心に各地で活動するライターである。彼女が執筆するアートやパフォーマンス、映像についての記事は、ARTFORUM、frieze、MOUSSEをはじめとする現代アート雑誌のほか、Financial Timesなど、さまざまな媒体に掲載されている。オックスフォード大学、クイーンメアリー大学、エディンバラ大学で研究を進め教鞭を取る傍ら、ルネッサンス期における知と文化的な歴史についての論文を発表した。
彼女の創造的な執筆の多くは、実演で行われる創作活動やパフォーマンスから生み出される。ニューヨークにあるガーシュインホテルでのレジデンス・プログラムに参加した際には、人々がみる夢を集め、受胎告知のタブロー・ヴィヴァン(活人画)として上演し、地元のシェフらとの共同制作により、サフランを使った食べることのできるアート作品シリーズに発展させた。その作品は、2012年にテート・モダンのタービン・ホールにて開催されたティノ・セーガルによるパフォーマンス作品「These associations」の一部として披露された。近年は、エーゲ海に浮かぶサントリーニ島からポルトガル沖アゾレス諸島のサンミゲル島までの火山周辺を訪れ、火山作用と芸術創作に関する調査を行っている。
ブログ Conversation Pieces
滞在期間:2016年4月11日-5月15日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
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Kanitha Tith/カニータ・ティス (1987年カンボジア プノンペン生まれ、在住)
Photo by Rattana Vandy
プノンペンを拠点に、彫刻やパフォーマンス、インスタレーションなど多岐に渡るメディアを用いて領域横断的に作品を制作している。プノンペンのロイヤル・ユニヴァーシティ・オブ・ファインアーツにてインテリア・デザインを専攻し、2008年に修士号を取得した。フレンチ・カルチュラル・センターやボパナ・センターなど、カンボジア国内にある数々の主要な施設で展覧会を開催。近年の活動としては、2012年に、ベルリンのMeinblau and Mikael Andersen galleriesでの展示にて、プノンペンの自宅で行ったコミュニティ・プロジェクト「SurVivArt」で使用した部屋を移築し、再現するインスタレーションを制作した。また、映像制作にも関心を持ち、フランス系カンボジア人の映画監督Davy Chouとアメリカ系カンボジア人のミュージックバンド、Dengue-Feverのプロジェクトに衣装デザイナーとして参画し、コラボレーションを行った。2010年には、芸術活動を通じて、カンボジア女性の権利や社会的立場の向上のために貢献した女性に贈られる『You Khin Memorial Women's Art Prize』を受賞した。
作品においては、ティスの個人的な経験や記憶と、急速に変化するカンボジアの状況など、身の回りで起こる変化・環境との関係性が表現されている。細い針金を編み込んで制作した彫刻作品は、カンボジアの伝統的な調理釜から集めたワイヤーなど、カンボジアでは日常的に見ることができる素材が使われている。そこには、子どもの頃の記憶に加え、個と公共をまたぐ場や、人とそれ以外のものの関係性への関心が映し出され、コミュニティが抱える問題との関り方、ジェンダーや女性のアイデンティティーなど、アーティストの役割とその可能性への問いが表現されている。ティスの作品は、近年のカンボジアが迎えている個と都市空間における経済や社会の変化や、身の回りの環境の変化を喚起する、視覚的で詩的な表現であるといえるだろう。
滞在期間:2015年5月14日-8月7日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:The BAR Vol.8 「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」カンボジアからのアーティスト、ラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスの新作展 (2015年7月11日(土) - 2015年7月25日(土)、 会場:山本現代)
オープニング・レセプション:2015年7月11日(土) 18:00 - 20:00
トーク: AIT ARTIST TALK #67
「映像とトークで触れるカンボジアの『過去に在る、いま』」カンボジアより、アーティストのラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスを迎えて (2015年7月15日(水)19:00-21:00 会場:AITルーム代官山)
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Rattana Vandy / ラッタナ・ヴァンディー (1980年カンボジア、プノンペン生まれ、台湾在住)
Still from "MONOLOGUE" , 2015
Single channel HD video, color, sound
台北とパリ、プノンペンを拠点に活動しているアーティスト。2007年に、アーティスト集団 スティーブセラパック(美術の反抗者)の共同設立者となり、2009年にメンバーと共に Sa Sa Art Gallery を設立した。2011年にはカンボジア初の現代美術の展示スペース SA SA BASSAC を立ち上げる。独学で写真を学び、2005年より写真家としての活動を実験的に開始。身の回りにある文化的なモニュメントや、物語を記録することの重要性や役割を考察している。主に、フィルムカメラを用いたアナログな手法により、厳格なフォトジャーナリズムと芸術的実験の境界線をまたぐような作品を制作している。近年では、歴史的文献とイメージ構築の関係性を哲学的に探求する作品を多く制作している。ヴァンディーにとって写真とは、虚構の構築物であり、抽象的かつ詩的な表面を持ち、自らの歴史を語るものである。近年では、映像制作に興味を持ち、最新作として短編映像「MONOLOGUE《独白》」を制作。2014年には外国語の書籍をクメール語へ翻訳し出版する Ponleu Association を共同で設立し、それまでクメール語に翻訳されていなかった外国語の資料にアクセスできる機会を提供している。また、自費出版も行い、哲学や科学、文学などさまざまな領域における知の共有を目指している。
近年の主な個展に「MONOLOGUE」(Jeu de Paume、パリ/2015年)(CAPC現代美術館、ボルドー/2015年)、「Surface」(SA SA BASSAC、プノンペン/2013年)、「Bomb Ponds」(アジア・ソサエティ美術館、ニューヨーク/2013年)(ヘッセル美術館、ニューヨーク/2010年)、主なグループ展に、「dOCUMENTA(13) 」(カッセル、ドイツ/2012年) 「The 19th Noorderlicht International Photofestival Terra Cognita」(オランダ/2012年)、「第1回キエフ・インターナショナル・ビエンナーレ」(キエフ、ウクライナ/2012年)、「Institutions for the Future、Asia Triennial Manchester II」 (マンチェスター、イギリス/2011年)、「第6回アジア・パシフィック現代美術トリエンナーレ」 (ブリスベン、オーストラリア/2009-2010年)などがある。東京では、2015年4月11日から6月28日まで東京都現代美術館(清澄白河)で開催された「 TIME OF OTHERS / 他人の時間」展(2015年)にも参加している。
2015年、第2回ヒューゴ・ボス・アジア・アート賞の最終候補者に選ばれている。
www.vandyrattana.com
滞在期間:2015年5月13日-7月31日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会: 「TIME OF OTHERS/他人の時間」 (2015年4月11日 - 6月28日 東京都現代美術館)
関連トーク: 「TIME OF OTHERS」 Meeting the artist Vol.1 Rattana Vandy (2015年5月30日(土)15:00 会場:東京都現代美術館 展示室)
展覧会:The BAR Vol.8 「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」カンボジアからのアーティスト、ラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスの新作展 (2015年7月11日(土) - 2015年7月25日(土)、 会場:山本現代)
オープニング・レセプション:2015年7月11日(土) 18:00 - 20:00
トーク: AIT ARTIST TALK #67
「映像とトークで触れるカンボジアの『過去に在る、いま』」カンボジアより、アーティストのラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスを迎えて (2015年7月15日(水)19:00-21:00 会場:AITルーム代官山)
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アルバート・サムレス (1987年アメリカ、ロサンゼルス生まれ)
2012年にカリフォルニア芸術大学を卒業後、ロサンゼルス沿岸の海流や、カンボジアの強い日射しにより時間の経過とともに素材が変化する絵画など、自然界の法則や動物の習性を利用した作品を制作している。近年の大規模なプロジェクトには、ニューヨークの全ての地下鉄と、世界中のほぼ全ての空港で流れるアナウンスを担当する声優のキャロリン・ホプキンスに詩の朗読を依頼したサウンド・インスタレーション『The Voice』を「シンガポール・ビエンナーレ2013」で発表したほか、本年秋に開催される「モスクワ・ビエンナーレ」では、アフリカ産のヤシの木に留まった大型インコがニュースを口ずさむ『Divine Intervention (An Act of God)』を構想している。ロシアでは、ペットとして飼われることが多いこのインコは、血統を遡るとアフリカに行き着く。野生時には止まり木だった故郷のヤシも、現在のインコにとっては、違和感のある環境となる。インコは、本ビエンナーレ会期中、美術館に生息する予定。東京・山本現代で行われる2人展では、天然染色の藍染め、東京の雨、米を使った作品を構想している。
http://albertsamreth.com/
主な展覧会歴 (抜粋)
・2012 「Non-Profit, Self-Titled」 (カル・アーツ/アメリカ)
・2012 「Bring Your Own Beamer, TRANSMISSION」 (MoCA/カリフォルニア)
・2013 「...Know Know」 (SA SA BASSAC/カンボジア)
・2013 「The Joy of Fear」 (The Impermanent Collection/カリフォルニア)
・2013 「Poster Problem」 (Otras Obras/メキシコ)
・2013-2014 「シンガポール・ビエンナーレ 2013」 (シンガポール美術館/シンガポール)
滞在期間:2014年5月16日-8月8日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会: 「The BAR Vol.7 アルバート・サムレス(アメリカ)とゴル・スーダン(ケニア)による新作展」(2014年7月12日(土) - 2014年7月26日(土)、 会場:山本現代)
アーティスト・インタビュー:Download(PDF / 2.3MB)
展覧会報告印刷物: Download(PDF / 1.9MB)
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ゴル・スーダン(1983年ケニア生まれ、在住)
ナイロビ、キベラを拠点に活動を行うコンセプチュアル・アーティスト。ケニアのエガートン大学にて哲学、社会学および英語を学ぶ。スーダンは、現在の都市文化における複雑な社会問題を、美しく、忘れがたく、時に挑発的な作品へと変貌させる芸術的行為を追求している。これまでの作品には、紙くずや段ボール、プラスチック、また、近年のケニアにおける選挙への抗議活動で燃やされた車のタイヤから拾い集めたプロテスト・ワイヤー (焼け焦げた針金)を使い、『ドローイング・イン・スペース』シリーズを制作している。そうした作品の数々は、アフリカ、特にケニアにおいて急速に変化しつつある社会や、人間性への鋭い観察が映し出されている。
www.gorsoudan.daportfolio.com
主な展覧会歴(抜粋)
・ 2012 「Cut off my tongue」 (Braeburn Theatre/ナイロビ)
・ 2012 「Angry birds」(クオナ・トラスト/ナイロビ)
・ 2012 「Cover/ Recover」 (Belgium Ambassador Residence/ナイロビ)
・ 2013 「At a glance」(ケニア・カルチャー・センター/ナイロビ)
・ 2013 「Eatings - Gor Soudan solo exhibition」 (タリスマン/ナイロビ)
・ 2013 「The poetic line」(ゲーテ・インスティテュート/ナイロビ)
・ 2013 「Resurrection: The Fire Next Time」 (The Nairobi Museum/ナイロビ)
・ 2014 「Always searching for something; drawings in space」(フリータウン・ポップアップ・ギャラリー/シエラレオネ)
滞在期間:2014年5月12日-8月8日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会: 「The BAR Vol.7 アルバート・サムレス(アメリカ)とゴル・スーダン(ケニア)による新作展」(2014年7月12日(土) - 2014年7月26日(土)、 会場:山本現代)
アーティスト・インタビュー:Download(PDF / 2.3MB)
展覧会報告印刷物: Download(PDF / 1.9MB)
ジミー・オゴンガ/Jimmy Ogonga(1977年、ケニア生まれ)
photo by: Megumi Matsubara
1977年、ケニア生まれ。遍歴のアーティスト/プロデューサーであり、アーティストとしての実践と、キュレーターとしての思考戦略を織り混ぜた活動を行っている。2001年、アーティストの表現やプロジェクトを促進するナイロビ・アーツ・トラスト/ナイロビ現代アートセンター(CCAEA)を設立。2010年、アムステルダムのライクスアカデミーに滞在。これまでの主な企画やプロジェクトに、「ザ・モンバサ・ビルボード・プロジェクト」 (2002/モンバサ)や、「アムニジア(記憶喪失)」(2006-2009/ナイロビ)がある。そのほか、共同企画として、「空間:現代アフリカアートの流通について」(2010/ヨハネスブルグ)や、「GEOグラフィックス」(2010/ベルギー)、マニフェスタ8の一環として開催した「インキュベーター・フォー・ア・パン・アフリカン・ローミング・ビエンナーレ」がある。展覧会カタログや書籍への寄稿も行う。
滞在期間:2013年7月8日-8月5日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
イベント:AIT レジデンス・キュレーターによる特別トーク「異言で思考する―アーティスト、空間、ふるまいから見るケニアの現代アート」ケニア出身のキュレーター、ジミー・オゴンガを迎えて(8月3日限定イベント)
アルベルト・ロドリゲス・コジア/Alberto Rodríguez Collía(1985年グアテマラ生まれ、在住)
エスクエラ・デ・アルテ 10(マドリード)にて彫刻を学んだのち、2007年には、グアテマラ初の彫刻専門工房「Taller Experimental de Grafica」を友人と設立した。これまでに、「セントラル・アメリカン・ビエンナーレ」(2010 ニカラグア)や、「Estampida」(2012 Des.Pacio ギャラリー/コスタリカ)に参加。テレビやインターネット、新聞の写真など、既存のメディアからモチーフを引用し、ドローイングや映像作品、版画を制作している。そうした作品の数々は、時に、植民地時代の歴史や、グアテマラの複雑な政治・社会に対する辛辣なアイロニーとして表現される。作品「Weekend(週末)」(2009)では、国を引き裂く発端となったグアテマラ内戦(1960-1996)を題材とし、語られない事実に対するシニカルな視点を一連のペインティングとして発表した。新聞の画像をスキャンし、大仰な色で塗りつぶした政治的な場面は、あえて安っぽく額装され、出来の悪い家族写真のように配置されている。それらは、ゲリラ、和平協定、腐敗した経済、政治、社会状況など、コジアと同世代の若者が巻き込まれてきた権力に対する嘲笑が込められている。
滞在期間:2013年5月14日-8月8日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」(2013年7月13日(土)- 7月27日(土)会場:山本現代)
イベント:夏のミングリアス「夢の中の古代都市と12,350キロ」和田昌宏とアルベルト・ロドリゲス・コジアの2名のアーティストによる、レジデンス・プログラム滞在報告会! (2013年8月3日(土)会場:代官山AITルーム)
AITレジデンスアーティスト アルベルト・ロドリゲス・コジアがおくる
真夏のグアテマラ映画上映会+トーク! (2013年8月4日(日)会場:代官山AITルーム)
アレグラ・パチェコ/Allegra Pacheco(1986年、コスタリカ生まれ、ロンドン在住)
1986年、コスタリカ生まれ、ロンドン在住。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(ニューヨーク)にて写真を学んだのち、ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アーツ(ロンドン)に在籍。主に、写真やドローイング、インスタレーションを制作している。これまでに、「White Box」SCOPE Art fair(2010年/マイアミ)や、「New York Photo Festival」DUMBO BK (2010年/ニューヨーク)などに参加。今回の東京滞在は2度目となり、前回の滞在時には、その様子を一連の写真作品「Japan」として制作した。そのシリーズには、映画『ブレードランナー』を思わせる近未来的な建築のほか、飲み屋街、ラブホテル、地下鉄のホームに寝転がる泥酔したサラリーマンの様子など、秩序の中にある雑多な「東京」の様子が写し出されている。2012年には、ジャスト・アナザー・スペース(東京)にて個展「Tokyoscapes」を開催。「Boobs(乳房)」(2012)では、コスタリカのラ・カルピオ地区の女性たちとの共同作業により、乳房の形をしたソフト・スカルプチャーを制作し、彼女たちの労働環境や社会的な立場を想起させ、社会の中で不可視になりがちな抑圧構造をユーモラスに浮かび上がらせた。
Allegra Pacheco HP:http://www.allegrapacheco.com/
滞在期間:2013年5月14日-8月8日まで
共催団体:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」(2013年7月13日(土)- 7月27日(土)会場:山本現代)
チアゴ・ホシャ・ピッタ/Thiago Rocha Pitta (1980年ブラジル生まれ、ブラジル・サンパウロ在住)
ブラジルのサンパウロ在住。シンガポールビエンナーレ(2006)、サンパウロビエンナーレ(2012)などに出品。東京滞在中(2008)には、都市を構成する建築のシンプルな形状に心引かれ、建築の無機的な要素と、有機的な塩の結晶を融合させたドローイングやインスタレーションを制作。ピッタは、自然界あるいは人工世界に見出しうる変化・風化・流動等の物理的現象に着目し(塩の結晶は、自然界の変化の象徴としてしばしば使用する素材)、インスタレーションや映像作品へと結実させる思索的な作風が特色。原美術館で開催される「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展では、布とセメントを使ったインスタレーションを発表予定。・http://www.andersen-s.dk/
滞在期間:2008年4月-2008年6月下旬/2012年6月29日-7月12日まで
共催団体:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:「The BAR vol.2 ドナ・オンとティアゴ・ホシャ・ピッタ」展
「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展
イベント:AIT ARTIST TALK #36 「もう一つの記憶と時間
アグン・フヤットニカ/Agung Hujatnika(1976年生まれ、バンドゥン在住)
バンドンにあるセラサー・スナリオ・アート・スペース(Selasar Sunaryo Art Space)のキュレーターを務める。2008年には、トーキョーワンダーサイトにて「アートの課題--What Game Shall We Play Today, Tokyo Wonder Site」を企画。2009年には「ジャカルタ・ビエンナーレ」のキュレーターを務めた。インドネシアの美術雑誌などにも多数寄稿している。
滞在期間: 2011年6月24日まで
助成機関:バッカーズ・ファンデーション
イベント:AIT SLIDE TALK #28:「次世代のキュレーターとアーティストが語る、インドネシアのアートのいま」
シャギニ・ラトナウラン/Syagini Ratnawulan(1979年インドネシア生まれ、バンドゥン在住)
・ 2006 ゴールドスミス・カレッジ(ロンドン)MAカルチュラル・スタディーズ修了
・ 2009「Cross/Piece」カッナ・ギャラリー(ジャカルタ)
・ 2009「バンドゥン・アート・ナウ」 ナショナル・ギャラリー(ジャカルタ)
・ 2010 個展「情事 第1章:ダイニングルーム/罪の無い嘘」ヴィヴィ・イップ・アートルーム(ジャカルタ)
滞在期間:2011年4月4日- 6月30日まで//2012年8月23日-8月30日まで
共催団体:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:The BAR vol. 5「Rounds – めぐりめぐる」
「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展
インスタレーションや写真、ドローイングなどを制作している。溶け落ちそうなシャンデリアが飾られた部屋に、汚れ無き白色を基調としたダイニング・テーブル、コーヒー・カップ、ティー・スプーンを並べたインスタレーションをはじめ、愛と不実さなど、相反する心理を表現している。また、写真作品『L.S』では、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐(The Last Supper)』をモチーフに、作品と同じ位置に並ぶ人物像を白いベールで包み、秘めたる歴史や時間を表現している。2002年には、国際交流基金設立30周年を記念し、東京オペラシティアートギャラリーと国際交流基金フォーラムにて開催された「アンダー・コンストラクションアジア美術の新世代」展に参加。
デュート・ハルドーノ/Duto Hardono (1985年インドネシア生まれ、バンドゥン在住)
・ 2008 バンドン工科大学 ファインアート・デザイン学科卒業(奨学金取得)
・ 2009「バンドゥン・アート・ナウ」ギャラリー・ナショナル(ジャカルタ)
・ 2010 個展「グッド・ラブ、バッド・ジョーク」セルサル・スナリオ・アート・スペース(バンドゥン)
・ 2010「ペルサカパン・マッサ」ナショナル・ギャラリー(ジャカルタ)
滞在期間: 2011年4月4日- 6月30日まで/2012年8月24日-8月30日まで
共催団体:バッカーズ・ファンデーション
展覧会:The BAR vol. 5「Rounds – めぐりめぐる」
「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展
サウンド・インスタレーションやドローイング、コラージュなどを主に制作している。タンバリンに緻密なドローイングを施した彫刻や、カセットテープを使用したインスタレーションなど、音を想起させるものと、繊細な手作業が融合した作品やパフォーマンスを手がける。『サボテンが演奏する、ジョン・ケージの4分33秒を、テープの繰り返し再生で上演する方法』(2010年)では、前衛芸術運動のフルクサスのメンバーであったジョン・ケージが作曲した無音の楽曲『4分33秒』(1952年)を引用した作品を制作。サボテンが再現する歴史的な楽曲を、カセットテープを通して繰り返し聴くという、ユーモア溢れるインスタレーションを発表。