The BAR vol. 8「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」展
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The BAR (The Backers Foundation and AIT Residence Programme) vol. 8
「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」
カンボジアからのアーティスト、ラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスの新作展
会期: 2015年7月11日(土)- 7月25日(土)
時間: 11:00 - 19:00(日曜・月曜・祝日休廊)*入場無料
会場: 山本現代(白金高輪)
レセプション: 7月11日(土)18:00 - 20:00
Left: Rattana Vandy "Bomb Ponds", 2009/ Right: Kanitha Tith "Companions", 2011, Photo by Rattana Vandy
プレスリリース:Download(PDF / 1.5MB)
展覧会チラシ: Download(PDF / 3.3MB)
アーティスト インタビュー:Download(PDF / 3.3MB)
Interview by ベン・デイビス
バッカーズ・ファンデーションとNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]は、7月11日(土)から7月25日(土)まで「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」展を白金高輪の山本現代にて開催します。本展は、海外のアーティストを東京に招へいするアーティスト・イン・レジデンス・プログラムの8回目の成果展となり、2015年はカンボジア出身の作家ラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスの2名が、これまでの代表作に加え、日本で制作した新作を発表します。
ヴァンディーは、主に写真や映像を用いて、歴史や記憶に触れる作品を制作しています。独学で写真を学び、「ドクメンタ(13)」(2012年)等の国際展や、東京都現代美術館をはじめ国内外に巡回する「TIME OF OTHERS / 他人の時間」展(2015年)にも参加している気鋭の作家です。ジャーナリストとしての活動経験を持ち、これまでに、国境紛争で緊迫した状況下にあった兵士たちのささやかな日常を捉えた写真を撮影した「Preah Vihear」(2008年)や、ベトナム戦争時にアメリカ軍による爆撃でできたクレーターが現在も池のように残された場所を撮影した「Bomb Ponds」(2009年)、また、70年代のクメール・ルージュ統治時代に命を落とした"あなた"への語りかけを綴った最新映像作品「MONOLOGUE《独白》」(2015年)などを制作しています。ヴァンディーは、そういった時代の痕跡や、記憶の断片を詩的なアプローチで紡ぎ出し、個々の人間の存在や、歴史を別の角度から伝えてゆくことの意味を私たちに問いかけます。本展では「Bomb Ponds」シリーズに加え、東京で制作した新作を発表します。新作「Shadow in the Dark」では、無数の釘を使った彫刻や詩で、人間の内面に潜む感情や精神性を静かに映し出します。
ティスは、彫刻やインスタレーション、映像、パフォーマンスなど多岐に渡るメディアを用いた作品を制作しています。2010年には芸術活動を通じて、カンボジア女性の権利や社会的立場の向上のために貢献した女性に贈られる『You Khin Memorial Women's Art Prize』を受賞し注目を浴びました。2012年に行ったコミュニティ・プロジェクト「SurViVart」では、アート活動や対話の場が限られたカンボジアで、プノンペンのティスの自宅を開放し、幅広い世代の人々が集う交流の場を創出しました。細い針金を編んだ彫刻作品は、ティス自身の個人的な記憶や経験に加え、カンボジアの社会的事象から受けた影響が反映されており、それは瞑想に近いプロセスから生み出された繊細で力強いモニュメントとも言えます。本展では、日本と東南アジアの儀礼文化における "霊魂(スピリット)"への関心と、ティス自らの体験を反映させた新たな彫刻作品を新作として制作します。
近年、カンボジアを含む東南アジアにおける経済的、社会的な変化の波は急激に加速しています。一方で、その裏側にある複雑な社会情勢や歴史の忘却、そして秘められた想像力を、私たちは未だ知る機会は多くありません。時代の痕跡や、作家自身を取り囲む大きな社会構造とそこからこぼれ落ちてゆく儚いものを、現代を生きる若い作家の新たな視点で眺めてみることは、過去から続く今日という日に想いを馳せるきっかけとなりうるでしょう。
テキスト:依田理花(AIT) 英文翻訳:ベン・デイビス
[ 開催概要 ]
展覧会:The BAR(The Backers Foundation and AIT Residence Programme)vol. 8
「Today of Yesterday - 過去に在る、いま」
カンボジアからのアーティスト、ラッタナ・ヴァンディーとカニータ・ティスの新作展
会期: 2015年7月11日(土)- 7月25日(土) 11:00 - 19:00(日月祝は休廊)*入場無料
会場:山本現代(東京都港区白金3-1-15-3F)TEL:03-6383-0626
主催: NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
共催: バッカーズ・ファンデーション
協力: 山本現代、株式会社ヨックモック、株式会社EASTWEST
レセプション: 7月11日(土)18:00 - 20:00
[ アーティスト紹介 ]
ラッタナ・ヴァンディー(1980年カンボジア、プノンペン生まれ、台北在住)
Still from "MONOLOGUE", 2015, Single channel HD video, color, sound
台北とパリ、プノンペンを拠点に活動しているアーティスト。2007年に、アーティスト集団 スティーブセラパック(美術の反抗者)の共同設立者となり、2009年にメンバーと共にSa Sa Art Galleryを設立。2011年にはカンボジア初の現代美術の展示スペースSA SA BASSACを立ち上げた。独学で写真を学び、身の回りにある文化的なモニュメントや、物語を記録することの重要性や役割を考察している。主に、フィルムカメラを用いたアナログな手法により、フォトジャーナリズムと芸術的実験の境界線をまたぐ作品を制作している。近年では、歴史的文献とイメージ構築の関係性を哲学的に探求する作品を多く制作している。ヴァンディーにとって写真とは、詩的で抽象的なフォルムに包まれた、自らの歴史を語る虚構の構築物である。近年では最新映像作品「MONOLOGUE《独白》」(2015)を東京都現代美術館をはじめ国内外へ巡回する「TIME OF OTHERS/他人の時間」展に出品している。また、教育への関心も高く、2014年には外国語の書籍をクメール語へ翻訳し出版するPonleu Associationを共同で設立し、それまでクメール語に翻訳されていなかった外国語資料にアクセスできる機会を提供している。自費出版も行い、哲学や科学、文学などさまざまな領域における知の共有を目指している。
www.vandyrattana.com
Looking in my office, 2006 [参考作品]
Preah Vihear, 2008 [参考作品]
Fire of the year, 2008 [参考作品]
Surface, France, 2011 [参考作品]
カニータ・ティス (1987年カンボジア プノンペン生まれ、在住)
プノンペンを拠点に、彫刻やパフォーマンス、インスタレーションなど多岐に渡るメディアを用いて領域横断的に作品を制作している。ティスの作品には、カンボジアの伝統的な調理釜から集めたワイヤーなど、カンボジアでは日常的に見ることができる素材が多く使われている。細い針金を編んだ彫刻作品には、ティス個人の記憶や経験に加え、コミュニティが抱える問題との関わり方、ジェンダーや女性のアイデンティティーなど、アーティストの役割とその可能性への問いが表現されている。ティスの作品は、近年のカンボジアが迎えている個と都市空間における経済や社会の変化、身の回りの環境の変化を喚起する、視覚的で詩的な表現であるといえるだろう。また、映像制作にも関心を持ち、フランス系カンボジア人の映画監督Davy Chouとアメリカ系カンボジア人のミュージックバンド、Dengue-Feverのプロジェクトに衣装デザイナーとして参画し、コラボレーションを行った。
SurViVart, 2012 [参考作品]
SurViVart in Berlin[参考作品]
Women can move away from the stove, 2010 [参考作品]
Photo by Anders Jiras
Heavy sand, 2012 (Live performance) [参考作品]
バッカーズ・ファンデーションとは:
「バックアップしていく人たち」という意味で、オーナー型経営者が集まり、社会貢献事業を行なう経営者有志の任意団体です。1994年に社団法人日本動物福祉協会を助成することからスタートし、今では、各団体に支援金を送るだけでなく、実際に会員たちが現場へ足を運び、「良い事を楽しく」を合言葉に参加する活動を行っています。現在は60人の会員が在籍し、そのなかで複数の委員会を作り、メンバー自らが参加型で手作りの活動を行なっています。本プログラムのほか、2005年からは、子どもたちを対象にした「バッカーズ寺子屋」塾の運営も行っています。The BARでは、これまでに、インド、ブラジル、アフガニスタン、シンガポール、グアテマラ、インドネシア、ケニアなどの国々から、14名のアーティストと6名のキュレーター、1名の編集者を招へいし、2012年には、アーティスト10名を再招へいし、原美術館にてグループ展を開催しました。
2015-6-12