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The BAR vol. 5「Rounds - めぐりめぐる」

The BAR vol. 5「Rounds - めぐりめぐる」
インドネシアからのアーティスト、シャギニ・ラトナウランとデュート・ハルドーノ新作展


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シャギニ・ラトナウラン / 「L.S.」/ 2010年 / 部分     デュート・ハルドーノ / 「訪問」/  2008年

 

プレスリリースはこちら Download(PDF / 904KB)

 

 

会期: 2011年5月28日(土)- 6月11日(土) 13:00 - 19:00 (日曜日・月曜日は休廊)*入場無料
会場: hiromiyoshii roppongi 東京都港区六本木5-9-20 TEL:03-5772-5233
主催: NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
共催: バッカーズ・ファンデーション
協力: hiromiyoshii roppongi、株式会社ヨックモック
レセプション: 5月28日(土)18:00 - 20:00  *19:00〜アーティストによるパフォーマンス

 

 

 バッカーズ・ファンデーションと、AITは、5月28日(土)から6月11日(土)まで、The BAR vol.5 「Rounds - めぐりめぐる」をhiromiyoshii roppongiにて開催いたします。本展は、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムによって東京に3ヶ月間滞在したシャギニ・ラトナウラン(1979年生まれ)とデュート・ハルドーノ(1985年生まれ)の2名のインドネシアのアーティストによる新作展です。

 3月に発生した東北関東大震災は、多くの海外のアーティストにとって、滞在をあきらめざるを得ない大きな出 来事となりました。その後の余震や、解決が見えない原発の問題など、国内外のニュースは、いまだに深刻な現状を映し出しています。そのようななか、ラトナウランとハルドーノは、来日を強く希望し、4月初旬より滞在を開始しました。スマトラ沖地震を体験し、社会的な変化や動揺、そしてそこからの克服を記憶している2人からは、こうした不安定な状況においてもなお、東京の魅力を積極的に発見し、制作の動機としていく、表現者としての絶え間ない探求心と活力が伺えます。

 シャギニ・ラトナウランは、家具や食器などを使用したインスタレーションをはじめ、写真、ペインティングなど、多岐にわたる表現を行っています。2010年の個展『情事 第1章:ダイニングルーム/罪のない嘘』では、とろけるようにしたたり落ちる真っ白なテーブルや椅子、食器が並ぶダイニングルームを、白骨のポートレートと共に展示しました。それは、肉や皮膚に覆われ、普段は見えない私たちの骨のように、清らかな愛の裏にある誘惑や背徳など、相反する感情を映し出しています。本展の新作では、夢と現実をテーマに、滞在中に見つけた古い家具やタイプライター、クッションなどを使用し、インスタレーションや写真、ドローイングを展示します。17世紀のフランスの哲学者、ヴォルテールによる「歴史とは、死者の上で我々が演じているペテンに過ぎない」という一説を引用するラトナウランは、使い古され、歴史化したものに「アート」という名のトリックを吹き込むことで、アーティスト、あるいは欺く者としてそれらを変容させます。

 デュト・ハルドーノは、サウンド・インスタレーションやパフォーマンス、ドローイング、コラージュなどを制作しています。特に、巻き取りの変化で楽曲の速度を変えたり、予測不能な音のブレやズレが生じるカセットテープをはじめ、レコードや古い楽器などを、ハルドーノは積極的に作品に取り入れます。『サボテンが演奏する、ジョン・ケージの4分33秒を、テープの繰り返し再生で上演する方法』(2010年)では、前衛芸術運動のフルクサスのメンバーであったジョン・ケージが作曲し、演奏家が無音の音楽を演奏する『4分33秒』(1952年)を引用したインスタレーションを制作しました。そこでは、鑑賞者は、三鉢のサボテンによって再現される歴史的な作品を、カセットテープを通して繰り返し聴く、という奇妙な時間を体験します。本展の新作においても、ハルドーノは、カセットテープを使用し、東京に溢れる音や、話し声などを無作為に録音したサウンド・インスタレーションや、滞在中に収集した物を貼り合わせたコラージュ作品を発表します。また、オープニング当日には、中古のシンセサイザーを使用したライブ・パフォーマンスを行います。

 見知らぬ土地で見つけた素材を用い、それが持つ意味や物語を丁寧に紐解きながら時間を巻き戻すことで、2人は、別の誰かによって創られた歴史や認識を溶かし、まだ見ぬものへと変容させていきます。大小の無数の島々により構成され、さまざまな歴史、宗教、文化、思考などが混在するインドネシアは、アート・シーンにおいても、豊かな表現が生まれています。ラトナウランとハルドーノは、そうした自国の環境、そして時に海外で、より柔軟に活動の場を移し、即座に適応しながら表現を行う世代だと言えるでしょう。新進気鋭のインドネシアのアーティストの力作、そしてその多様な表現の対比をぜひご期待ください。

テキスト:堀内奈穂子 [AIT / エイト]


 

<作家紹介>
 ・シャギニ・ラトナウラン(1979年インドネシア生まれ、バンドゥン在住)
 ・デュート・ハルドーノ(1985年インドネシア生まれ、バンドゥン在住)

 

※ バッカーズ・ファンデーションとAITでは、キュレーターの招聘も行っています。6月3日(金)より、アグン・フヤットニカ/Agung Hujatnika(セラザール・スナルヨ・アート・スペースキュレーター、インドネシア)が3週間東京に滞在する予定です。


 


 

<バッカーズ・ファンデーションとは>
「バックアップしていく人たち」という意味で、オーナー型経営者が集まり、社会貢献事業を行なう経営者有志の任意団体です。1994年に社団法人日本動物福祉協会を助成することからスタートし、現在は、各団体に支援金を送るだけではなく、実際に会員たちが現場へ足を運び、「明るく楽しく」を合言葉に参加する活動を行っています。現在は、55人の会員が在籍し、そのなかで複数の委員会を作り、メンバー自らが参加型で手作りの活動を行なっています。本プログラムのほか、2005年からは「バッカーズ寺子屋」という子どもたちを対象にした塾の運営も行っています。The BARシリーズでは、これまでに、インド、ブラジル、アフガニスタン、シンガポール、モロッコなどの国々から、8名のアーティストと4名のキュレーターを招聘し、2012年には、全招聘アーティスト10名によるグループ展を予定しています。

2011-5-15