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スッティラット・スパパリンヤ

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スッティラット・スパパリンヤ / Sutthirat Supaparinya
(タイ、チェンマイ生まれ、同在住)


Photo by Jeremy Samuelson


チェンマイ大学美術学部卒業後、ライプツィヒ視覚装丁芸術大学大学院でメディアアートを学ぶ。インスタレーション、映像やスチール写真、オブジェクトなどを横断的に用いるスパパリンヤの作品は、これまで正史とされた情報を解釈して現代の社会市民に及ぶ影響と、その構造を明るみにしたり、問いを含むものである。近年は、特に歴史的事実に関心を寄せ、人的行為への影響とその社会・文化的状況についてプロジェクトを進めている。

これまで「第10回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、2018)、「サンシャワー:東南アジアの現代美術 1980年代から現在まで」(森美術館、東京、2017)、「Soil and Stones, Souls and Songs」(Jim Thompson Art Center、バンコク、2017)、「Public Spirits」(Centre for Contemporary Art Ujazdowski Castle、ワルシャワ、2016)、「Unearth」(Singapore Art Museum、シンガポール、2014)、「ビエンナーレ・ジョグジャ」(ジョグジャカルタ、2019)など、国内外の展覧会や芸術祭に参加するほか、トーキョー・ワンダー・サイト(現:Tokyo Arts and Space)や黄金町バザールなどのプログラムを通して日本での滞在経験も持つ。

アーティスト活動に加えて、2013年にチェンマイで現代アートを広めることを目的にChiang Mai Art Conversation (CAC)を立ち上げ、2016-19年まで芸術文化におけるネットワークをさらに広げるために国際交流基金アジアセンターと協働を行い、Asian Culture Station (ACS)のディレクターとして数々のプログラムを企画した。


滞在期間:2019年9月6日 - 10月15日
助成:2019 The Asia Center Fellowship Program



When Need Moves the Earth, video, 2014


When Need Moves the Earth, video, 2014



滞在を終えて

国際交流基金アジアセンター フェローシップを終えたスパパリンヤに、日本での滞在を振り返る質問をしました。

AIT: 日本ではこれまでも、黄金町エリアマネジメントセンターやトーキョーアーツアンドスペースのレジデンスプログラムに参加したり、恵比寿映像祭や森美術館での大規模なグループ展にも参加しています。今回のフェローシップを通した滞在ではどんな新しい発見がありましたか?

Supaparinya (Som): 私は移動にフレキシブルな考えを持っていて、いくつかの関心テーマを抱えて新たな人と出会うことを楽しんでいます。今回の滞在では、特に東京だけでなく複数の都市を探索することが出来ました。これによって、日本をよりマクロかつリアルな視点で、そして、他国との関係性をも見つめることに繋がりました。

AIT: これからの活動において、この滞在はどのように役立つと考えていますか?

Som: 私の創作活動における興味の大部分に「ランドスケープ(風景や土壌)」があります。現在、そしてこれからも、歴史や移動ルート、地政学や経済学、自然資源における諸問題と、これらによるランドスケープの変化には注視していくでしょう。この滞在は、これまでは本で読んだり見聞きした土地を実際に訪れ、そこに暮らす人びとから直に話を聞く機会を与えてくれました。そこで得た情報は膨大なもので、整理して解釈していくにも時間が掛かるので、すぐ次のプロジェクトやリサーチに取り掛かることは容易ではありません。そうしたことからもこの滞在は、アーティストとしてキャリアの大きな新しい出発点となりました。

AIT: 活動の拠点とするチェンマイでは、アジアセンターとの協働によって、アジアン・カルチャー・ステーション (ACS)*1 をディレクターとして牽引していましたね。これまでのACSの活動から、チェンマイはどのような文化的・知的経験を育んだのでしょうか。また、活動を終えた今、これからの展望など、アーティストとしてコメントはありますか?

Som: ACSは、快くそのネットワークと知識を共有し拡張しようとするさまざまな団体と個人の協力のおかげで、現代アートとその文化をチェンマイで育むエンジンになれたと思います。活動に関わった全員が、文化的・知的な実践を推し進めてくれました。まずは、(直接、間接関わらず)その種となるものを植え、自ら育てたことを嬉しく思います。まだ政治や経済状況の不安定さは経験しますが、行政とプライベートセクターどちらにも、勢いをもって始まった新たなプロジェクトがあります。ACSやCAC*2 のようなイニシアティヴと小さなコレクティヴとしてのプロジェクトが、今後も多くの人が集まりチェンマイがどうあるべきかを創る発想の源になってほしいと思います。

*1 | Asian Culture Stationの略。2016-2019年までACSとのパートナーシップによって開かれた場。チェンマイの中心部を走るニマンヘミン通りの傍に位置していた。東南アジアや日本からも多数の関係者が訪れ、展示やトークイベントなどのパブリックイベントが行われた。国際交流基金アジアセンターのホームページに掲載されているインタビュー『スティラット・スパパリンヤー――ドアをたたくこと』にもその活動の様子が掲載されている。
*2 | Chaing Mai Art Conversationの略。2013年の立ち上げより、スパパリンヤは自身のアーティスト活動のほかにも、メンバーとして積極的に活動している。

2019-9- 6