TAS2020レポート:地球絶滅適応探知センター:気候危機やパンデミックと芸術から学べる適応法(2020年11月11日)
現代アートの教育プログラム「Total Arts Studies 2020」
UBIAゼミ「静かになった美術館:パンデミックや気候危機からアートを考える(UBIOS=宇宙美術オンラインシリーズ)」より
日時:11月11日(水)19:00-20:30
講師:ロジャー・マクドナルド(AIT、フェンバーガーハウス館長)
場所:オンライン(AIT Zoom ルーム)
あらゆる領域とつながりを持つ芸術の歴史や実践を追求することで、さまざまな病いや危機に対する重要な「スキル」や「適応力」を発見していくUBIOS(宇宙美術オンラインシリーズ)。「気候変動危機」「パンデミック」「コロナ禍における芸術鑑賞」をテーマに開催するレクチャーシリーズです。2回目はロジャーが「フェンバーガーハウス」で立ち上げた「地球絶滅適応探知センター」での研究を元にレクチャーを行いました。
レクチャーは、20世紀を中心にこの分野における歴史的文脈や出来事の共有からはじまりました。文学作品や、ロシアで展開された思想運動「Russian cosmism」。また、戦時中に広島・長崎に落とされた原子爆弾や冷戦時代の核シェルター。また、環境問題や福島で起きた原発事故、気候変動がもたらしたカタストロフにもふれていきます。
「もしかしたら、私達は新たな惑星レベルの神話時代に突入しているのかもしれない」
ロジャーはそう語ります。安定した地球環境から、不安定な時代に突入している。けれど、芸術文化は創造性をつかって、危機の中で今ある世界とはもう一つの別の世界を見ていくことをやってきたのではないかと。
わたしが興味深いと感じたのは、キング牧師とガンジーの思想をとりあげ、思想と芸術の関連性を指摘していた点でした。例えば、黒人に対する差別の中でサックスの美しいメロディを奏でたジョン・コルトレーンの音楽のように、独裁政権下で活動したナイジェリアのフェラ・クティのように、社会思想と反響しあいながら、アーティストは、時にトリックスターのように、危機のなかで我々の主体性を取り戻す手助けをする実践を生み出していきます。
新型コロナウイルスの感染拡大という危機の時代のなかで、創造性を丁寧に見ていくことで、むしろ私達は理性や科学とは違う形で、まったく新しい世界を想像することができるかもしれません。過去の実践を紐解きながら、今この時代のなかで、生まれ出でている芸術や表現をもっと知りたい、調べてみたいとつよく感じました。
荒田 詩乃
2020-12-17