TAS2020レポート:アーティストと考える科学と生活の教室:三原聡一郎(2020年12月12日)
現代アートの教育プログラム「Total Arts Studies 2020」
dear Me ゼミ「見えるものと見えないものからアートとココロを考えるオンラインシリーズ:多様な当事者とアートの学び・体験を考察する」より
日時:12月12日(土)13:00-14:30
講師:三原聡一郎(アーティスト)
モデレーター:堀内奈穂子(AIT、dear Me ディレクター)
場所:オンライン(AIT Zoom ルーム)
第4回目のdear Meゼミ講座では、アーティストの三原聡一郎さんをゲストに招き、参加した小学生の子どもたちと科学や生活の中にある色々な発見を楽しむオンライン・ワークショップを行いました。オンラインで子どもたちに向けてワークショップを行うのは、初の試みとなります。このワークショップは、株式会社資生堂 2020年度カメリアファンド花椿基金による寄付で開催されました。
右画像:《圏》2019 対馬アートファンタジア
今回は、子どもたちが学校の授業で学ぶ「理科」の知識にも触れながら、そこにアーティストの視点やアートの考えを加えることで、自然や科学の不思議を考えたり実験を取り入れ、子どもたち一人一人がアーティストとの対話の中から科学を違った角度から捉え、体験するプログラムを実施しました。
子どもたちの手元には、木でできた四角い箱。これは、講座の開催前に三原さんから子どもたち一人ひとりに送られた、手作り観察キット。
実験キットには、三原さんが世界各地を旅しながら集めたものや、普段の制作で育てているものなどを詰め合わせてあります。ピカピカするもの(LED回路)、鳥のさえずり(木とネジ)、森の香り(ヒバ油)、電気の味(金属フィルム)、そして手触り(試験官に砂、苔)など五感に響くアイテムがぎゅっと詰まっています。
三原さん手作りの観察キットが詰まった箱
ワークショップのはじめに、小箱を手にした子どもたちに、どんな香りがする?と尋ねると、それぞれ顔を近づけて、「木のにおいがした」「土のにおい!」「お茶みたい」いろんな声があがりました。
途中、三原さんの自宅のベランダに移動し、ベランダで育てている色々な種類の苔も見せてくれました。
苔は世界で1万種類以上あって、なんと南極の厳しい環境の中でも生息している、世界でも最強の植物なのだといいます。
ワークショップ前半は、三原さんのこれまでの活動や作品を、スライド写真や映像で紹介しました。これまでに作った、高さ4、5メートルもある部屋いっぱいの泡をつくるプロジェクトや、地球の自転をテーマに、苔の生えた土の円盤がくるくると回りつづける装置、また、世界を旅した時の記録映像を見ながら、その旅での三原さんのエピソードをお話してくれました。
《を超える為の余白ー空白のプロジェクト#1》2013
クリフトン湖、オーストラリア
また、エピソードの中には、アマゾン奥地で過ごした経験や、各地で砂を集めて周ったことなども。そのほか、紹介された作品の数々は、三原さん自身が南半球と北半球で過ごしたことで着目した、地球の自転や水の渦巻きの違いや、「鳥のさえずりの装置を森の中に置いたら鳥たちはどう反応するだろう」など、これまでの日常のふとした疑問やひらめきから生まれた作品やプロジェクト。
みんなが普段過ごしている中にある素朴な疑問や関心を大切にすることで、作品や発明につながるたくさんのヒントがあることを教えてくれました。
最後に、電気回路の仕組みを紹介しながら、実際に手元にある回路でLEDを点灯させる実験をしたり、鳥類の鳴管から生まれるさえずりの仕組みを知ったあとに、木とネジでできた鳥のさえずりの装置を回して、自分たちで鳥の鳴き声を出してみます。細かいところまでじっくりと観察して、それぞれ気になったことや発見したことを伝え合いました。
三原さんの人柄も安心感を与えてくれたのか、子どもたちがとても活発に発言して、大人も刺激をもらえた1日でした。子どもたちの普段からの自然や科学への関心の深さが伺える時間で、アーティストの視点の共有が、少しでも自由な発想につながってもらえたら良いなと思いました。
今後も色々なテーマで、子どもたちと一緒に科学や生物の神秘を探っていきたいと思います。
テキスト:藤井 理花 (dear Meプロジェクト)
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2021-2-22