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アートフェア東京2015 レポート


3月20日(金)から3日間開催されたアートフェア東京2015にて、AITでは、エデュケーショナル・パートナーとして、コレクターやキュレーターなど、アート界で活躍する専門家をナビゲーターに迎え、ガイドツアーを企画しました。


その中のひとつ、 「アートフェア東京」をレポートしよう! では、CINRA.NET 編集者の佐々木鋼平さんをお迎えし、自分の言葉で感じたことや考えたことを表現したい方、アートライターや編集に興味のある方を対象に、実際にアートフェア東京についてレポートするツアーを開催しました。

まずはじめに、テーブルを囲んで佐々木さんのお仕事である「編集」やアートフェア東京についてご紹介。レクチャーでは、CINRA.NETを中心に、WEB媒体や雑誌、新聞では、アートレビューや批評がどのような切り口で掲載されているのか、様々な媒体を例に挙げながら、編集者の仕事である、アート記事を企画する際の考え方や大事にしていることなどを伺い、また、読者に分りやすく伝える記事の書き方やポイントなど、アートを言葉にするためのコツを学びました。

アートフェア東京2015の会場内では、実際に、アーティストやギャラリストにインタビューを行い、作品について解説いただいたり、アートフェア東京の見どころをまわり、記事になりそうなネタを集め、最後に、レポートを提出頂き、佐々木さんからコメントを頂きました。


今日は参加者のみなさんにご提出いただいたレポートを一部ご紹介します。

みなさん独自の視点や切り口で書かれていて、ツアーで学んだことが生かされた内容になっています!



塚本智也が「描かずに」見せる、眩しい光

想定した媒体、ターゲット:あまり絵を見ない人も含む幅広いターゲットに、アーティスト・作品の魅力をざっくりと掴んで頂くことを意識しました。


アートの強さは「いかに立ち止まらせることができるか」で測れるかもしれない。特に珠玉の作品が集うアートフェアでは、コレクターの足を止める吸引力こそ不可欠だろう。
3月19日〜22日まで開催されたアートフェア東京2015の川田画廊(神戸市)のブース、塚本智也の絵の前で立ち止まった人は少なくないはずだ。私もその一人で、理由ははっきりしている。まず、その絵がとても眩しかったから。そして何の絵かわからなかったから。一眼レフ写真を間近で見たような、鮮明なのに大部分がピンボケしているような絵に見えた。私は少し離れて正面から絵を見た。そして5秒後に、2頭の子鹿が水面に浮かびあがってくるのを見た。
塚本智也の表現は「2つの『描かない』」が特徴だ。まず、対象物を描かない。一見抽象的なドットの組み合わせで、そこに人や動物のシルエットが隠れている。また、全ての色彩を描かない。使うのは赤・黄・青の3原色のみだ。しかし見る者の脳内で、描かれないモチーフや、緑や紫の豊かな色彩が想像される。時にはまるで絵が動くような、渦を巻く流れや水しぶきも感じられるかもしれない。「不在」を想像させることで、見る人それぞれに違った体験をもたらす絵なのだ。  直視しがたい眩しさを覚えたと伝えたら、彼の原点は「木漏れ日」の一瞬をとらえることだったという。光を意識させる彼の作品に合わせた、透明のポストカードも美しかった。

金 有那


左・真中:「アートフェア東京2015」川田画廊 展示風景/右:塚本智也 ポストカード




想定した媒体:専門誌ではない雑誌に「こんな展覧会がありますよ」という告知記事として


3月20日(金)〜22日(日)まで開催されたアートフェア東京2015では、山本現代のブースに宇治野宗輝の3つの作品が展示されていた。
テーマは「和製英語」。いわゆる「カタカナ語」と言われるもので、一見英単語のように見えるが英語圏では使わない言葉、あるいは元の意味とは著しくずれて浸透している言葉のことをいう。3つの作品それぞれにある和製英語がカタカナ表記で隠されているという仕掛けだが「一度隠されている言葉がわかってしまうと、もう、そうとしか見ることができなくなる」というもの。宇治野は近代の歴史を「アジアの近代化は、イコール西洋化である。もちろん、美術についても例外ではありません」と言い切る。その中で日本語にも、英語にも属することのなくこぼれ落ちてしまったもの。言葉という本来目に見えないものを物質としてポンッと目の前に置かれることで、見る側はその言葉のいわば「ストレンジャー」としての孤独に向き合うことにもなる。それは表現、というものの本質を見るようでもある。
実は今回のテーマは2002年に発表した作品「日本シリーズ」から派生したもの。「当時はあまり受けなかった」というが、なぜ、このタイミングでの再チャレンジかという問いに「今の世の中は、まるで言論統制が始まってしまったかのように思える。だから、今、今じゃないかと思った」という。表現というものの本来の自由さ、孤独さに向き合う体験となるかもしれない。

長谷川 舞子



琳派と現代アート

想定した媒体:美術鑑賞等に多少の関心がある一般読書


金氏徹平(彫刻家)、コシノジュンコ(デザイナー)、しりあがり寿(漫画家)、染谷聡(工芸家)、中島克子(陶芸家)、蜷川実花(写真家)、矢柳剛(版画家)、山口藍に山本太郎(画家)。日本を代表するこれら現代美術家名から、あなたはどのような共通テーマを思い浮かべるだろう。アートフェア東京2015の企画展示「琳派はポップ/ポップは琳派」は、誕生から400年を迎える「琳派」を切り口に彼らの作品を紹介する。光琳の「紅白梅図屏風」をポップにリスペクトした屏風絵(山本)、伝言ゲーム風にデフォルメされたガラス板上の風神雷神図(金氏)、龍柄を含む艶やかなグラフィックのクロス(コシノ×矢柳)、水墨と金箔を用いた漫画(寿)、小石に挟まれた漆細工(染谷)、銀色の三脚付きの晴れやかな大皿(中島)、錦絵+アニメ風絵柄の置物(山口)、春を彩る写真パネル(蜷川)等は、琳派がポップアートに融合することを鮮やかに証明する。クールジャパンを形成する日本の現代アートは、やはり江戸大衆文化の精神を受け継いでいるのだろうか。ギャラリーの垣根を超えた一流アーティスト作品の結集は、アートフェア東京ならでは企画展示で、一見に値する。

島田 真琴



観る?学ぶ?買う?!楽しみ方いろいろ。--アートフェア東京 2015

想定した媒体:自身のブログにて


「ギャラリーって気になるけど、ちょっと敷居が高くて入りづらい...」 「"家にアート作品のある生活"なんて憧れるけど、どうやって買うのかなぁ?」
そんな方にオススメしたいイベントが「アートフェア東京」です。

「アートフェア東京」は国内外130のギャラリーが集まる日本最大のアートの見本市。古美術、工芸 から近代日本画・洋画、現代アートまで、幅広いジャンル・時代の作品が集まります。
今年は3月20(金)〜22(日)、東京国際フォーラムで行われたのでその様子をレポートします。


■アートフェア東京の楽しみ方3つ!
1. 国内外の個性的なギャラリーを巡る!

アートフェア東京2015 会場風景

今年は130にも上るギャラリーのブース展示が行われました。オープンなスペースなのでちょっと気になったギャラリーのブースにふらりと立ち寄って作品を見たり、ギャラリストさんとお話したり、時にはアーティストご本人とお話できてしまったりもできます。
若手からベテランまで、各ギャラリーのイチ押しの作品が展示されているので、ギャラリーの雰囲気や流行を感じることもできました。



2. ギャラリーの枠を超えた著名アーティストの作品を楽しむ!

特別企画 アーティスティックプラクティス
「琳派はポップ/ポップは琳派」展示風景 蜷川実花

アートフェア東京では2011年から「アーティスティックプラクティス」というギャラリーやジャンルを超えた企画展示が行われています。今年は「ヴェネツィアビエンナーレ」と「琳派」をフィーチャーした企画展示が行われていました。 「琳派はポップ/ポップは琳派」では、琳派400年を記念して"ド派手でPOP!!"な "琳派的"な現代アートを特集し、蜷川実花さんから、金氏徹平さん、しりあがり寿さんらの作品が展示されていました。現代の日本でも人気のイメージって400年も前から続いているものなんですね。


3. トークショー・ガイドツアーでより深く作品に触れる!

ガイドツアーの様子「山本現代」ブース
宇治野宗輝氏による作品解説

会期中には多くのトークショーやガイドツアーが行われます。今年のヴェネツィアビエンナーレの日本館キュレーター・中野仁詞さんの旬なトークや、明和電機などのアーティスト本人の「創る」思考を伺えるトーク、また "アートコレクター" 宮津大輔さんのナビゲートによるコレクター目線でのガイドツアーなども行われました。
私もトークやツアーに参加しましたが、作品を見ただけでは分からなかったアーティストやギャラリストさんの想いを伺うことができ、より深く作品を知ることができました。ポイントを押さえて解説していただけるので「会場が広すぎてどこから見ていいか分からない!」なんていう場合にも良いかもしれませんね。

■自分の部屋に置くなら?!妄想しながら作品を観る!!
では、実際に今年のアートフェア東京を巡ってみました。
折角なので「自分だったら何買おう?」という視点で気になったギャラリーを立体・絵画・陶芸から1つずつ、計3つをご紹介します。

1. アラタニウラノ
まずは現代アートゾーンの立体作品から。歯ブラシや本などの日用品の上に針金のようなもので創られたこちらの繊細なオブジェ。
岩崎 貴宏さんによる作品。なんとこれ、"しおりの糸"や"歯ブラシの毛"といった繊維を接着剤で固めてつくられているんです。
大量生産の日用品からつくられる手作業の繊細なオブジェ、綿糸や毛糸といった有機的な柔らかい素材でつくられた鉄塔のような無機質な強固な構造物、手に収まるサイズに再構成された観覧車のような見上げるほど大きな建築...といった、ひとつの作品の中におさめられた様々な対比が面白いですね。

2. Yukiko Koide Presents

続いて絵画。こちらは日本の"アール・ブリュット"(=正規の美術教育を受けていない人が生み出す芸術) の分野の草分け的なギャラリー。
オーナーの小出由紀子さんは1990年代にアール・ブリュットの作品を日本に広げるためにこちらのギャラリーを立ち上げられたそう。投資のようにアートが購入さていたバブルの時代に出会った「生の芸術」の素直さに魅了されたそうです。
こちらでは特に障害を持つ人のアートを扱う、シカゴの「Creative Growth Art Center」の作品を展示していました。まるで "子どもが描いた絵" のようですが、柔らかい曲線とシンプルな色遣いで構成されていて、肩肘張らずに画面の面白さを楽しむことができる"親しみやすさ"を感じました。「日本的な"カワイイ"とか"ヘタウマ"といった感覚につながるところがあるのではないでしょうか?」(小出さん)とのこと。確かにそんなところで共感できるのかもしれませんね。


3. 水戸忠交易
最後に、古美術・現代陶芸ゾーンから陶芸の作品。
こちらの "ドット絵" のような陶芸作品は、増田敏也さんの作品です。
"ブロックのように角張らせて成形した粘土を1段ずつ積層してつくる" というまるで3Dプリンタのような作り方ですが、それは「縄文土器と同じ作り方」(ギャラリストさん)とのこと。遠目から観るとまるでプラスチック製のブロックで作られているようですが、近づいてみると素焼きした土に釉薬で色づけされていて、とても暖かみのある柔らかい色合いの作品であることに気づきます。
技法は陶芸としては「ありふれた技法」とおっしゃっていましたが、伝統的な"陶芸"から思い浮かべる堅いイメージとは違っていて、違和感なく部屋に置いて楽しめるのではないでしょうか。


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このように様々な楽しみ方ができるアートフェア東京。2015年は終了してしまいましたが、毎年開催されているので気になったら是非来年参加してみてくださいね。
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高砂 理恵


2015-4-20

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