【旅のレポート】第55回ベネチア・ビエンナーレ」へ! ベネチアとミラノで最新のアートシーンと私立美術館をめぐる8日間
2013年のAIT海外アートツアー第2弾はイタリアへ。
「第55回ベネチア・ビエンナーレ」を訪ね、ミラノに移動して私立美術館などをめぐるイタリアへのアートの旅。今回は、ツアー参加者の石井理恵さんから、旅のレポートをいただきました。
はじめに
8/23〜8/30まで、NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT/エイト)が企画/エスコートするアートツアーに参加しました。昨年の「ドクメンタ13」(ドイツで5年に1回開催される国際展)は、AIT主催のツアーに参加せずに個人で出かけたのですが、見るべき物を探すのに迷い、疲れるとすぐ休憩の繰り返しで、後から色々な見落としを知り、悔しい思いをしました。
今年のベネチアは、さらに多くの展覧会数があったのと、それらが街中に広がっていたため、1人では絶対に行けないと思い参加しました。
結果、消化することができない程多くの作品を見た、まさしくアート満喫の旅となりました!
ベネチア・ビエンナーレ
成田空港出発から飛行機を乗り継いで十数時間。夜11時過ぎにベネチアに到着した後、長旅の疲れを一気に忘れるほど快適なチャーターの水上タクシーに乗って滞在ホテルのあるリド島に到着。翌日から見学するベネチア・ビエンナーレに備えて、この日はすぐに床に着きました。
いよいよ、最新のアートを巡る旅の1日目がスタート。
水上バスに乗り、第55回ベネチア・ビエンナーレのメイン会場「ジャルディーニ」に到着。29ケ国のパビリオンが並ぶジャルディーニのセントラルパビリオンは、今回のアーティスティックディレクターを務めるマッシミリアーノ・ジオーニが「エンサイクロベディック・パレス」というテーマで企画したグループ展が開催されています。
心理学者のカール・グスタフ・ユングの夢や幻覚を印した「赤の書」を始め、26部屋に様々なアーティストの作品が並びます。これを半日で見学し、その後は、国別パビリオンで特別賞を受賞した日本館を始め、他国のパビリオンを残り半日で巡りました。
ジャルディーニの見学だけでも、かなりのスピードで見ても丸一日を費やす程のボリュームです。
2日目は、ベネチアの街中で繰り広げられている企画展に行ってきました。
まずは、プラダ財団が2011年にオープンした展示スペースで行われている「態度が形になるとき:ベルン1969/ベネチア2013」を見学。ここでは、1969年にキュレーターのハラルド・ゼーマンが企画した伝説の展覧会を44年という歳月と場を超えて再現。アルテ・ボーヴェラのアーティストやヨゼフ・ボイスなど約70名の作品が対話するように並び、とても新鮮な体験でした。
次に、大富豪のアート・コレクターであるフランソワー・ピノーが所有する2つの美術館を見学。パラッツォ・グラッシの会場で開催されていた「ルドルフ・スティンゲル」展では、廊下も壁も全て真っ赤なペルシャ絨毯に覆われ、そこにペインティングが展示されています。絨毯の模様が作りだす空間自体も、作品を見る気持ちに影響を与えるような、壮大な展示空間でした。
2つ目の会場は、プンタ・デラ・ドガーナで開催されていた「プリマ・マテリア」展。近年注目を集める日本の「もの派」の作品のほか、マルレーネ・デュマス、ロニー・ホーンなど30名のアーティストによる80点が展示されていました。広い空間とそれぞれの作品に圧倒されます。
最後に、対岸のサン・ジョルジョ・マッジョーレで開催されていたイギリス人アーティストの「マーク・クイン」展を見学。屋外の展示では生命の母である海に面した場所に、地球生物の進化を巡る胎児の成長過程を掘り出した彫刻が展示されており、そのスケールの大きさに大興奮しました。
多くの展覧会、作品に対峙し、1日中テンションが上がり続けた日でした。
3日目は、再び、ベネチア・ビエンナーレ。世界中のあらゆる知識を収録すべく架空の博物館計画を設計したマリノ・アウリティの模型からスタートするアルセナーレ会場を見学。会場の外では、街中の教会の礼拝堂に展示されていた中国人アーティストのアイ・ウェイウェイ作品、また、体育館という空間を使って作品を展示したキプロスとリトアニアの合同展など、驚きの連発でした。
ミラノへ
翌日、ベネチアを離れていよいよミラノへと移動。
到着後すぐに訪れたトリエンナーレデザイン美術館では、イタリアをはじめ、世界のプロダクトデザイン、建築、ジュエリーなど、デザインにまつわる展示を見学。アレッシィ他、椅子や家具などの名立たるデザイナーにインタビューしたビデオなど、そこでしか見られない作品に出会いました。
その後、同じ公園の敷地内にあるスフォルツァ城の博物館を見学し、イタリアの美術史においても重要な14世紀にミケランジェロが死ぬ直前まで作っていた未完の作品「ロンダニーニのピエタ」を見学できました。
ミラノ到着の翌日は貸切バスで出発。バスで1時間ほどのヴァレーゼという街にある「パンザ・コレクション」を見学。ここは、パンザ伯爵の別荘を美術館にした場所で、彼が収集したさまざまなミニマル・アート作品やアフリカの彫刻が並びます。特に、ダン・フレヴィンやジェームス・タレルなど、空間そのものが作品のために作られた展示は圧巻でした。また、この別荘は、地元の人でも道に迷うほど分かりにくい場所にあり、ここに迷わず着いたのは本当にツアーのおかげ。感謝・・・
日本でも有名なヘンリー・ダーガーの作品をはじめ、自分の信仰・世界の見え方を、反復される文字や模様などで表現しているもの。貝殻や牛乳パックを素材にした緻密な作品が並びます。日本人の作品も多数収集されています。
アール・ブリュットの作品は、今年の国際展のベネチア・ビエンナーレでも多くが紹介され、その表現がますます注目されています。
ミラノ滞在の最終日は、自由時間を使い、中心地から少し離れた工業地帯にあるアート・スペース「ハンガー・ヒコッカ(Hanga Bicocca)を訪れました。ここは、1886年に開発された工業地区の跡地に2004年、現代アートの展示空間がオープン。またこの時、オープン記念として作られたアムゼルム・キーファー「THE SEVEN HEAVENLY PALACES」は、重さ90トン、高さ14 - 18メートルのコンクリートで作られた7つの作品で構成されており、その大きさと工場の跡地という空間によって、まるで神話的空間に迷いこんだような感覚になります。
企画展では「Eternity」をテーマに、アメリカのアーティスト、マイク・ケリーの2000 - 2006年に作られた重要な作品(インスタレーション、ビデオ、彫刻、ペインティング)など10作品が、広い空間を利用して展示されていました。どれも見ごたえのある作品ですが、無料で見ることができ感動しました。
8日間の旅は、見てきたものを消化するのに1ケ月間くらいかかる程アートにふれ、そして、毎日美味しいイタリア料理に大満足した旅でした。
基本的には個人旅行を好む私ですが、パンザ・コレクション、ハンガー・ビコッカなど、AIT(エイト)のエスコートするツアーだからこそ行く事ができた場所が多かったと思います。
次回もまた、参加したいです!
文 : 石井理恵 (MAD2013キュレーションコース、オーディエンスコース修了生)
ツアーの詳細はこちら>> http://www.a-i-t.net/ja/future_archives/2013/06/ait-art-tour-2013-vol3.php
2013-12-24