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メアリー・レッドモンド レポート

長年、日本を訪れてみたいと思っていた私にとって、このレジデンスの経験は大変素晴らしいものとなった。やはり実際に訪れるまで、その国のこと、人々、アートのことを知ることはできないと感じるからだ。また、親切なサポート、プロフェッショナルなアドバイスと迅速な対応をしてくれたAITには心より感謝したい。このような組織と出会い、共に仕事ができたのは特別な体験だった。現代アートの教育プログラムを運営するAITは、アートに深くコミットし、考える場をつくっている。そのような彼らが、私に東京の現代アートシーンを紹介してくれたこと、また、日本の美術館、ギャラリー、そしてアーティストを紹介してくれたことはありがたかった。

1)FOUND AND MADE ワークショップについて

グラスゴーからの他のアーティストとともに、滞在中にワークショップを行った。このワークショップでは、アーティストがどのような視点や思考で作品を制作しているかという感覚を参加者に養ってもらう目的があった。AITのスタッフと密に話し合いながら進め、アイディアを磨いた。

photo by: Yukiko Koshima

2日間の参加者は、年代も関心も異なる人たちだった。初めて制作する人にとっては若干、難しいチャレンジになると思ったが、彼らは私たちの声や作品紹介に熱心に耳を傾け、理解しようとしてくれた。また、時に悩みながらも、実験的なことにも果敢に挑戦している様子も見られた。ワークショップが終了する頃には、それぞれが完成した彫刻作品を展示し、タイトルをつけ、展覧会を作るまでに至った。互いに助け合いながら制作をする姿に、短い間に彼らの間に絆が生まれたのを感じた。私にとっては、さまざまな参加者と出会い、話すことで、彼らの日常の出来事や、それをどのように表現するかについて知る事ができ、魅力的な体験だった。参加者一人一人が、彼らの人間性を作品に投影していたと思うし、それを上手に表現していた。

アートをつくることはある種、カタルシスな経験でもある。ワークショップの参加者がその経験を通し、少しでも望むように表現できるようになったことを願っている。参加者が現代アートをより深く知り、親しみを感じることで、さらに能動的にアートに関わる鑑賞者へと変わっていくことは、このワークショップを行う意義の一つだった。最後には、アートをより違う視点で見てみてみたいと言った声や、より親しみを持って楽しんで見てみたいという感想が聞けて嬉しかった。これは私にとって東京滞在のハイライトとなった。

photo by: Yukiko Koshima

photo by: Yukiko Koshima

2)作品への影響について

東京滞在中、アートはもちろん、ランドスケープ、建築、人々、ファッション、食など、興味のあるもの全てを写真に収めた。今後、それらから受けた影響を咀嚼し、作品として表現していくことは間違いない。また、日常使いの袋から伝統的な布まで、日本で見つけたさまざまな素材も、今後、新たな作品に組み込んで行く予定だ。このように、東京のレジデンスの影響は、今後も、私の言葉や表現を通してUKのアートシーンに紹介されていくはずだ。

3)帰国後の新作について

帰国後の2012年7月に開催された彫刻プロジェクト「Bold Tendencies 6」では、早速、これまで述べたような素材・体験が映し出された新作を展示した。ロンドンのペッカムにある駐車場を会場にした本年の展覧会では、私は、駐車場のワンフロア全てを使った、最長で90メートルになる「七分割の滑走(Seven Split Overglide)」という、壮大なサイトスペシフィック彫刻を制作した。

その作品の素材には竹が使われている。竹は以前にも作品に使用したことがあったが、日本に滞在し、精巧に作られた竹製品から美しい嵐山の竹林までを見たことにより、より目的意識を持って竹を作品に使うことを試みた。この作品は、私の解釈による竹林を表現したものになる。

この作品はまた、私が日本で見たいくつかの要素も反映されている。その一つは、生け花だ。特に、草月流の勅使河原茜氏の作品からは大きな影響があった。本来は繊細な工芸品として扱われていたものを、その用途を拡張し、ダイナミックなスケール感で使う彼女の表現には圧倒された。

日本の庭園もまたその一つ。庭園の流れ、フォルム、そしてデザイン。庭園を歩く歩調とそれを眺める動作は、私の作品の中を歩く体験と良く似ているはずだ。鑑賞者は、彫刻の中の小道を通り、作品のディテールを見るためにしばし立ち止まり、眺めるような仕組みになっている。



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